こんにちは。SMATEXエンジニアリングです。
今回は、前回整理した砂糖水製造設備のP&IDをもとに、原料受入工程の運転方案へ落とし込む考え方を整理します。P&IDに描かれた配管、弁、計器を、実際の運転手順と運転条件へ変換していく工程です。
運転方案とは、プラント設備をどの順番で動かし、どの条件で次の動作へ進み、どの条件で停止・異常扱いにするかを整理した設計資料です。いわば、設備を安全に動かすための手順書とも言えます。今回は、シーケンスの流れをフローチャートで表し、運転条件やインターロック条件をロジックダイアグラム(以下、ロジック図)で補足する構成にします。
1.設備概要のおさらい
本設備は、ローリー車で輸送される原料砂糖水を原料タンク T-001 で受け入れる設備です。受入能力は2m3/h、貯蔵能力は3m3とします。
受入量は流量計で積算し、受入開始時刻、受入終了時刻、受入量、記録結果を保存します。
ここで重要なのは、P&ID上の配管・弁・計器を見て終わりにしないことです。
プラント設計として運転できる形にするには、「どの条件で開始できるか」「どの状態を受入中とするか」「どの条件で正常終了または異常終了にするか」まで決める必要があります。
2.フローチャートとロジックダイアグラムの役割
フローチャートは、シーケンスの状態遷移を視覚的に追うために使います。
状態遷移とは、たとえば「運転開始許可」から「原料受入開始」、さらに「原料受入中」へ進むように、設備の運転状態が順番に切り替わることです。
一方で、フローチャートだけでは運転条件が曖昧になりやすいです。たとえば「受入開始インターロック条件ON」と書いてあっても、その条件がセンサーエラーなしなのか、弁異常なしなのか、受入許可が必要なのかまでは読み取りにくくなります。試運転やトラブル確認では、この条件の中身が重要になります。
そこでロジック図を使います。ロジック図は、AND、OR、NOT、タイマ、セット・リセットなどを使って、運転条件やインターロック条件を明確に表す図です。
フローチャートで「今どの状態にいるか」を追い、ロジック図で「その状態へ進む条件」を確認する、という役割分担にします。
| 表記方法 | 得意なこと | 苦手なこと | 今回の使い方 |
| フローチャート | SEQの流れ、状態遷移、オペレータ操作の順番を追いやすい | 条件の中身が長くなると図が読みにくい | 運転方案の全体の流れを表す |
| ロジックダイアグラム | 運転条件、インターロック、異常条件を明確に表せる | 設備全体の流れは追いにくい | フローチャート中の条件を補足する |
3.各計器の機能を洗い出す
P&IDから運転方案を作る前に、まず計器や機器が制御上どの役割を持つかを洗い出します。ここを曖昧にすると、あとでSEQやインターロックを作るときに条件が抜けやすくなります。
| 対象 | 主な役割 | ロジック上の扱い |
| LI-001 | 原料タンクの液位監視 | 満液判定、受入停止・再開の判断に使う |
| FIQ001 | 原料受入量の積算 | 受入中の積算、記録データに使う |
| AV-001 | 原料受入弁 | SEQ指令でOPEN/CLOSEし、異常状態も監視する |
| LMS-001 | ローリー接続確認 | 受入開始前の許可条件に使う |
| AG-001 | タンク内の攪拌機 | 液位条件に応じてON/OFFする常時処理に使う |
4.I/Oを整理する
制御設計では、P&ID上の計器や操作をI/Oとして整理します。I/OはInput/Outputの略で、制御装置に入ってくる信号と制御装置から出す信号を指します。
今回の図では、接頭辞で信号の種類を分けています。
| 接頭辞 | 意味 | 例 |
| x_ | デジタル入力。押しボタンや接点信号など、ON/OFFで入る信号 | x_LMS, x_START_PB |
| y_ | デジタル出力。ランプや弁への出力など、PLCから出すON/OFF信号 | y_START_PL |
| w_ | アナログ入力。液位や流量など、数値として入る信号 | LI001_PV |
| R_ | 原料受入を表す接頭辞。Receipt of raw materials の頭文字を取ったもの | R_LEVEL_FS_SV, R_REPORT |
5.原料受入SEQのおおまかな流れ
原料受入SEQは、受入許可が成立していることを確認し、開始操作後に原料受入弁を開いて受入を行い、正常終了または異常終了を判定して、最後に実績を書き込む流れです。
SEQはSequenceの略で、設備の動作順序を管理する考え方です。ここで使うSTEPxxは、シーケンスの現在状態を表す内部ステップ名です。
まず STEP00 で運転開始許可を判定します。受入許可、ローリー接続状態、シーケンス完了状態、タンク満液状態などを確認し、開始できる状態かを見ます。
次に STEP01 で受入開始インターロックを確認し、FIQ001やLI001のセンサーエラー、AV001異常がないことを条件にします。
開始操作が成立すると STEP02 の原料受入中に進み、AV001をOPENして原料の受入と積算を開始します。その後、受入停止操作やタンク満液などで STEP03 の正常完了へ進みます。
非常停止やインターロック異常などの場合は STEP03_1 の異常完了として扱います。最後に STEP04 で原料投入実績を書き込み、SEQを終了します。
5.1.運転方案をフローチャートで整理する
今回作成したフローチャートはこちらです。添付.原料受入工程ロジック.pdf
フローチャートでは、設備の運転状態を上から順番に追えるようにします。四角は処理、ひし形は条件分岐、丸付き番号はページ内または別位置への接続を表します。読むときは、まず青文字タグを見て、次にひし形の条件を確認し、必要に応じてロジック図で条件の中身を追います。

図1 原料受入SEQのフローチャート抜粋
この図では、運転開始許可ON、受入開始インターロック条件ON、運転開始操作ON、原料受入中、正常終了、異常終了、実績書込という流れを確認できます。
フローチャートは、SEQステップの流れを説明するには向いていますが、ひし形の条件が何で成立するかまでは図だけでは不足します。
5.2.運転条件・インターロック条件をロジックで整理する
ひし形で表した条件の中身は、ロジック図で定義します。たとえば STEP00 の運転開始許可は、受入許可、LMS-001 ON、シーケンス完了などの条件から作られます。
STEP01 の受入開始インターロックは、FIQ001センサーエラー、LI001センサーエラー、AV001異常などがないことを確認します。
図2 フローチャートとロジックダイアグラムの対応
ここで大事なのは、フローチャートとロジック図を別々の資料として見ないことです。フローチャート上の青文字タグと、ロジック図側の青文字タグを対応させることで、「どの条件で次へ進むのか」を追えるようになります。
なお、Time up と書かれている箇所は、PLC内部のタイマカウント完了を意味します。たとえば TM06、TM07、TM08 はフローチャート上の遷移待ち条件であり、ロジック図側に同じタグ名が出てこなくても問題ありません。
内部タイマはPLCプログラム内で管理されるため、外部信号やインターロック条件とは扱いを分けます。
5.3.正常完了と異常完了の考え方
原料受入では、単に弁を開いて閉じれば終わりではありません。どの条件で正常完了とするか、どの条件で異常完了とするかを決める必要があります。今回のロジックでは、原料受入正常完了を STEP03、原料受入異常完了を STEP03_1 として整理しています。

図3 正常完了条件のロジック抜粋

図4 異常完了条件のロジック抜粋
正常完了は、受入停止操作、タンク満液状態、原料受入中の解除などから成立します。異常完了は、非常停止、受入開始インターロック不成立、停止操作などから成立します。異常完了でも記録を残すことで、トレーサビリティを確保し、あとから運転履歴や停止原因を確認できます。実績データでは、STEP03 の場合はOK、STEP03_1 の場合はNGとして記録します。

図5 記録データ仕様の抜粋
記録データ仕様では、開始時刻、終了時刻、積算量、記録結果を扱います。
ここではPLC内部時計の時刻データと、原料受入の完了信号を使って記録結果を決めます。
正常完了信号 STEP03 がONした場合はOK、異常完了信号 STEP03_1 がONした場合はNGとします。
6.まとめ
P&IDから運転方案へ進めるときは、計器や弁をそのままI/O表に並べるだけでは不十分です。
設備をどう動かすか、どの条件で開始できるか、どの条件で停止するか、正常完了と異常完了をどう判定するかまで整理する必要があります。
今回のように、フローチャートでSEQの流れを示し、ロジック図で運転条件やインターロック条件を補完すると、状態遷移と条件の両方を確認しやすくなります。
青文字のタグでフローチャートとロジックを紐づけて追うことで、プラント設計としての運転意図が読み取りやすくなります。
次回は、各機器の仕様をまとめると同時に、IO割付からPLCの構成を決めていきます。次回もぜひご一読ください。
SMATEXエンジニアリングでは、P&IDの整理から運転方案作成、シーケンス設計、インターロック設計、試運転まで、プラント立ち上げに必要な設計業務を支援しています。
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